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漫画 7SEEDSについて

『7SEEDS』(セブンシーズ)は田村由美の作品で2001年11月から連載が開始。16年の連載を経て35巻で完結した人気漫画。「月刊flowers」で連載されていました。地球に巨大天体が降り、様々な災害に見舞われた未来の地球で目覚めた少年少女たち。必死に生きようとする中で傷つきながらも成長していく冒険の物語。平成18年度(第52回)小学館漫画賞少女向け部門を受賞した話題の人気作品です。
※作品のあらすじ(初期~最終回)はこちら

●7SEEDS 率直な感想

今までに無い切り口が新鮮な漫画、7SEEDS(セブンシーズ) 。率直な感想を書いてみます。

まず最初に1巻を読んだ時は「なんじゃこりゃ?本当に面白いの?」と言うのが第一印象でした。表紙もなんだか地味な少女漫画風。主人公のナツがそんなに魅力的にも見えず(どちらかと言うと見ている人をイライラさせる)、話も唐突過ぎてついていけませんでした。

しかし、2巻に入ってからその印象がガラリと変わりました。物語の設定がしっかりして来て、キャラクターも増えてくる。それにより、唐突だったストーリーにもしまりが出てきます。特に春のチームの登場が大きいです。仮に1巻だけを読んで、夏のBチーム編だけでこの漫画を判断していたら、読む気を無くすかもしれません。しかしそれではあまりにももったいない。この漫画の面白さは2巻以降から爆発しますから。徐々に増えていくチーム。キャラ立ちしてくる登場人物達。少しづつ解けていく謎。どれをとっても目を離せない展開になって行きます。

そんな中でも物語が最も悲しく、そして深くなるのが過去の龍宮シェルター編です。ここはもう読んだ人にしか伝わらないのですが、設定と心情描写がすばらしい。
追い詰められていく中でも希望を探す人々。そしてそんな人々を騙さなければいけない人々。そしてついえて行く希望…。わたしはこの過去シェルター編を特に見入ってしまいました。これだけで1つのSF映画を作れてしまうくらいの話です。

そして過去編と言えば夏のAチームの話もすさまじい。生き残りをかけたサバイバルが展開され、そのどれもが悲しくも残酷。友との絆、そして別れ。それらが残した傷は未来に行っても安居達を苦しめることになります。完璧に見える夏のAチームですが、「修行して未来に行ったのに時代遅れ」と言う設定が意外と良かったですね。

物語が進むと各チームが出会い始め、協力したり反発したりしながら大きな謎に迫っていきます。それぞれがとても成長し、とくにナツは何も出来ない弱虫から確実に成長しています。人の後ろばかりついていた頃に比べて、自分で考えて行動できていることにすごく勇気をもらう人も多いのでは。彼女を信頼して信じ、励ます嵐もとても印象的でした。
そして、Bチームと共に行動することによって安吾と涼の心が少しずつ変わっていくのが明らかにわかります。安吾には嵐の存在が、涼には蝉丸の存在がとても重要になってきます。

佐渡でのエピソードではさらに彼らの心にフォーカスを当てた描写がありましたね。具体的に良かったのは、安吾と涼が「テスト」とか「決められた運命」とかいうものに疑問を持ち「疑いとか、落としいれる」とか関係無しに他チームとの関係を模索するところ。過去にこだわりいまだに彼らを監視しようとする元教官、百舌から精神的に解放された瞬間が彼らが育った佐渡だったのがまた良いですね。ここが育った施設だと分かったのは、いまだにこの地できれいなままの茂の死体を発見したからなのですが、その後彼の死体を背負い脱出しようとする安吾の姿に涙が出ました。

女子目線では花と嵐、そして新巻の微妙な関係、どんどん距離が近くなっていくナツと蝉丸にも目が離せません。

目が離せないストーリー。少年漫画にも劣らない冒険活劇。16年の連載期間を経て7SEEDSは35巻でついに完結します。最初はナツが主人公としてスタートした漫画でしが、最後にはもう主人公が誰なのかわからない位見事な群像劇で、必ず好きなキャラが見つかります。個人的には最後まで頼もしかった角又や秋ヲ、つかみどころは無いけれど役に立つ朔也が好きでした。

最終回までの細かいストーリーはあらすじに書きましたが、別の世界、そして未来を感じさせるラストはファンを納得させるものではないでしょうか。メンバーの成長、それぞれの愛。まさに感涙ものの最終回でした。女性作者ならではの丁寧な心理描写とサバイバルのリアルさ、そして圧倒的なストーリーは漫画史に残る傑作と言い切る事ができます。いつか続編を読めたら嬉しいのですが…。田村先生、不定期な番外編でも良いので、よろしくお願いします!【つみれ】