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映画 悪人 感想

映画「悪人」は2010年9月11日公開の映画です。監督は李相日、原作は吉田修一。出演者は妻夫木聡、深津絵里、満島ひかりさんなどです。深津絵里さんが「第34回モントリオール世界映画祭」で最優秀女優賞を受賞して公開前から話題になりました。今回はそんな今評判の映画「悪人」について、率直な感想を書いてみたいと思います。キャスト、ロケ地についても触れています。

前述しましたが深津絵里さんが「第34回モントリオール世界映画祭」で最優秀女優賞を受賞し、公開前から話題だった映画「悪人」。口コミ、メディアなどによって大きく評判が広がり、一気に有名な映画になりました。様々なレビューがありますが、独自の視点でレビューしてみようと思います。まずはあらすじから書いてみましょう。

■あらすじ
長崎の漁村に住む若者、祐一(妻夫木聡)は心の不安から出会い系サイトに救いを見出そうとする。そこで出会ったのが佐賀の紳士服量販店に勤める光代(深津絵里)。二人は徐々に惹かれあい、心の隙間を埋めるように刹那的な愛に溺れていった。しかしそんなひとときも一瞬でどん底に変わる。祐一は連日ニュースで報道されていた殺人事件の犯人であった。

光代は彼が自首しようとするのを止め、祐一と共に絶望的な逃避行へと向かう。人けの無い灯台に逃げ込んだ2人は、一瞬の幸福を手にいれるが、その行動は被害者の家族、加害者の家族の人生をも変えて行った。

なぜ祐一は人を殺したのか?なぜ光代は殺人者を愛したのか?引き裂かれた家族の運命はどうなるのか?いったい悪人とは何なのか。誰の事なのか。善悪の葛藤、そして明らかになるひとつの謎。物語は、衝撃と共にクライマックスに…---。

■率直な感想
あらすじを読むととても面白そうです。幸福のにおいはしませんが、「不幸の中のひとときの愛」といった切なさを想像させます。 試写会でもそのストーリーは評判でした。

まず最初に感じたのは「地方のリアルさ」です。地方の若者の描き方がリアルで、「ぶつけようの無いエネルギーの充満」をあらわしています。自分も地方出身ですが、この「若者のどうしようもない不安」の描き方がどうしようもなくリアルです。

犯罪を題材にした映画は数多くありますが、それにいたる動機を土地と共に描ききったのはそれだけで見るに値する映画かなと思いました。出来れば都会に住み、そんなことなど知らずに生きて行けたらいいのだけれど、都会に住んだら住んだで、人間関係の希薄さに悩んでしまうこともあります。そう言う意味では都会しか知らない人達にも是非見て欲しいな思う描写でした。

それと、地方の「影」の部分が目立ちますが、バスの運転手が樹木希林に向かって声をかけるところは地方の「光」の部分を表していたと思います。

ストーリー全体としては、遺族や加害者、そしてその家族にもスポットを当てた「それぞれの視点」が特徴的です。そのためか、時折逃避行中の二人に感情移入できない場面も。二人の不幸にもっと没頭したいと言う人には余計な描写かもしれませんが、自分はそこで一旦冷静に戻れるところが良いと感じました。ここは意見が分かれるところでしょう。それでも最後には二人の世界に引き込まれて涙してしまう人も多いかもしれません(最後の祐一の行動は反則です)。絶望とも感動とも言える不思議な感覚が胸をえぐります。

出演者の中では、深津絵里さんが第34回モントリオール世界映画祭受賞したこともあり、特に注目です。素朴で純粋、そして強い女を見事に演じきりました。ドキッとしてしまうシーンも多数あります。さらに満島ひかりさんがとても良いスパイスになっていたように感じます。元フォルダ5、アイドルとしてスタートした彼女。徐々に芸の幅を広げ、時にはローカル局での番組キャスターなどにも果敢に挑戦し、ついには世界でも評価される映画に出演するほどの女優になりました。そういった意味では演技に深さが感じられるのも当然かもしれませんね。

主演の妻夫木聡さんも好演していました。欲を言えば悲劇とは似合わない、二枚目俳優の「光」が強かったのだけが残念です(それでも前半は見事に垢抜けない地方の若者を演じきっていまが)。この映画にはその「光」はちょっとだけ余計だった気がするので。それでも最後に納得させられてしまうのは、彼が基本的な演技の技量というものはしっかり持っているからでしょうね。自由にその二枚目オーラを消せる様になればもの凄い俳優に化けそうなので、これからが楽しみです。

最後のシーンはみなさんどう受け止めるかな。自分は彼女を助けたのだろう思いますが…。

いろいろ書いてしまいまいたが、この辺にしておきますね。総じてとても面白い映画だと思います。いや、面白いというよりは「胸に刺さる映画」でしょう。日常にどうしようもない寂しさや孤独を感じている人には、特に心につき刺さるものがあるのではないでしょうか。見て損はない、心に残る(刺さる)映画だと思います。次はロケ地についてです。

「悪人」のロケは、九州中心に行われました。主な県は、福岡・佐賀・長崎です。 福岡市では東公園、佐賀では呼子、長崎では五島市「大瀬崎灯台」など、地元の人にはおなじみの場所も多く出ています。

大瀬崎灯台は日本の灯台100選、日本の夕日100選に選ばれている名所。たどり着くまでには山道や傾斜の激しい道を歩かなくてはいけないため、なかなか大変です。映画の中では灯台の横に小屋がありますが、これは映画のためにスタッフが作ったセットで実際には小屋はありません。一番のおすすめはやはりこの大瀬崎灯台です。苦労してたどり着いた先にはあの絶景。恋人と行っても、一人行っても、逃避行感を味わえますね(笑)

もう1つの名所、ズバリ佐賀駅(普通ですいません)!佐賀駅は、祐一(妻夫木聡さん)と光代(深津絵里さん)が出会う、特に重要な場所です。これらは佐賀県フィルムコミッションのサポートの元行われました。

最近こうした地方のフィルムコミッションが活躍していますね。フィルムコミッションはロケ地の細かい調整から許可、時にはトイレの確保まで、様々なことを行います。地方の映画には地元の人の知識が大いに役立つので、かなり重要なお仕事です。興味がある方は北九州中心にロケ地を回ってみてはどうでしょう。

今回は話題の映画「悪人」レビューでした。【でんすけ】