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大河ドラマ 龍馬伝 最初から最終回まで見た感想

龍馬伝は2010年に放送されたNHK大河ドラマです。漢字は「竜馬伝」ではなく「龍馬伝」。脚本は福田靖、 主演は福山雅治。

坂本竜馬の土佐での青春時代から、その死までを描いた作品で、日本だけでは無くアジアでも人気となりました。今回は第一話から最終回まで一年を通して「龍馬伝」を見た率直な感想を書いてみたいと思います。ネタバレもありますのでこれから見る方はご注意を。

福山雅治が主演と言うことで期待した方、不安に思った方、それぞれの思いがあったことでしょう。自分的には「吉と出ていた」ように思います。その理由は後で述べるとして、まずは簡単なあらすじから。

■あらすじ
土佐の商人の子として生まれた坂本龍馬。身分制度の厳しい土佐の下士として生まれ、様々な葛藤の青春時代をおくる。

仲間達と多くの志を抱き始めた竜馬はやがて江戸に剣術修行に。それから数々の出会いを経験し、桂小五郎などの大物にも感化される。そして勝海舟に出会うことで龍馬の未来が大きく開けた。

海援隊を作り世界を飛び回り商売をする夢や、妻お龍との出会い。そんな様々な運命の渦の中、長州藩と薩摩藩を結びつける薩長同盟を締結、さらに大政奉還を後押しするなど大活躍をする。そんな龍馬にやがて暗殺の影が…。

■率直な感想
長いので強引にまとめましたが、以上が簡単なあらすじです。岩崎弥太郎の口から龍馬の一生が語られる異色のNHK大河ドラマ「龍馬伝」。いくつかの特徴がありました。まず、画質がフィルム風に黄ばみがかってること。鮮明と言うより、雰囲気を大事にした仕様でしょう。一瞬テレビの設定を間違えたかな?と思いましたがこういう映像で作られているようです。

ストーリーは龍馬の青春時代から、武市半平太(大森南朋)、岡田以蔵(佐藤健)ら土佐勤王党の活躍、そして海援隊の設立、薩長同盟、大政奉還、そして暗殺とほぼ史実通り、龍馬の人生の面白いところだけを切り取っていました。なので、後日談などほとんど無く、龍馬の一生だけを追いたい方には十分ですが、歴史を見たい方には「え、ここで終わり?」といった印象もあるでしょう。

個人的には陸奥や沢村のその後、戊辰戦争、西郷や木戸による新政府の流れもさらっとでいいから最後に説明して欲しかった。歴史ドラマでなかなか触れられないアンタッチャブルな存在、高杉晋作を魅力的に描いたり、新撰組をわりと多く登場させたり、脇役に対しての丁寧な描き方がこのドラマの一番良いところだと思っていただけに、最後に彼らがどうなったか気になる人も多数いたことでしょう。それだけにあっさり終わりすぎたかなと。

製作陣は「歴史的大物はできるだけ描くがあくまで龍馬の物語」といったところなのでしょう。

キャストも福山雅治の時代劇っぽく無さが新しくてよかったと思います。時代劇が好きでは無い人も見やすかったのではないでしょうか。なんだか大河ドラマと言うより青春群像を見ているようでした。一番キャラ立っていたのは高杉晋作(伊勢谷友介)で、狂気の中一本通った芯が印象的でした。逆にちょっと残念だったのが龍馬の妻、お龍の真木よう子。強気で活発なお龍を描くためにに男性的強さもそなえた彼女をキャスティングしたのでしょうが、低い声と目力がちょっと浮いていたように思います。もう少し愛嬌のあるお龍でも良かったのでは?賛否のあった前田敦子は少ない出番の中で愛嬌をふりまき、意外に地味ながら好演だったかも。

岩崎弥太郎の目から龍馬が語られると言う切り口はとても良かったでしょう。冷静に事実を述べ、視聴者に分かりやすく説明していました。最後に弥太郎の龍馬に対する思いが爆発するところも感動的でした。いろいろ書きましたが、龍馬伝、近年の大河ドラマではなかなか良かったのではないかと思います。歴史好きとしてはちらっとでも良いからその後の日本の流れを描いてほしかったのですが…。

■最終回
龍馬伝の最終回はまさに龍馬の死を描いたものでした。龍馬は史実どおり殺されてしまいます。そこにいたるまで、物語は様々な収集に向かいます。

まず、新撰組。中岡真太郎と近藤勇の戦いの中で原田泰造演じる近藤勇が「これからのことなどわからん」とその不安ぶりを口にします。これは最後の侍の言葉とでもいいましょうか。見廻組の今井信郎(市川亀治郎)のセリフからも武士の世の終わりを感じさせました。そして岩崎弥太郎。彼の口からも龍馬に対する本音で物語りは終わります。「あんな龍は二度と現われない」と…。

個人的にはやけにあっさりした最終回だなと思いました。と言うのも、前半あれだけ絡んできた谷原章介演じる桂小五郎(木戸貫治)が最終的には龍馬を見捨てるような描写が…。西郷吉之助(高橋克実)や大久保利通(及川光博)がそうするのは不自然ではありませんでしたが、桂さんまでそれをするのは手のひらを返しすぎではないだろうかと感じてしまいました。

特筆すべき点として、最終回には様々なゲストが出演しています。まず今井信郎役の市川亀治郎。そして渡辺篤役のSION。とどめは佐々木只三郎役の中村達也。歌舞伎からミュージシャンまで。見廻組がまさに新撰組以上になんでもありの暗殺集団と化していました(笑)福山雅治は元々SIONの大ファンであり、SORRY BABYのカバーCDを出したり、自身のラジオ、「オールナイトニッポン」で生歌を歌ったりしていました。本人からしたら奇跡の競演なのかもしれませんね。

龍馬伝では暗殺の犯人をあいまいにせず、はっきりと見廻組の今井信郎と断定して描いています。史実では龍馬暗殺はいまだに謎のままですが、この点は一番可能性の高い「今井説」を採用したのでしょう。そして、「薩摩藩の関与をにおわす」あたりがぬかりないと言うか…。ここは暗殺者は不明で終わられるよりよかったでしょうね。この物語では「今井!」と決めてくれた方が。

福山龍馬の時代劇っぽく無さが特徴だった龍馬伝でしたが、非常にスタンダードな最終回でした。リアルタイムで見ていたら地方選挙当選速報が出て雰囲気をぶち壊してくれましたがね(笑)当時録画保存していた人は土曜日にもう一回録画したことでしょう。

総評でも触れましたが、欲を言えば後日談が欲しかったです。暴れてくれそうな徳川慶喜もあばれず、陸奥宗光の出世も描かれず、沢村や海援隊のその後も置き去り。おりょうの存在感は無し。最後でちょっとあっさりしすぎたかなと言う印象ですが、それまでが結構面白かったから、まとめるには仕方なかったのかもしれませんね。

個人的には高杉さんが活躍していたあたりの展開がダイナミックで好きでした。

それにしても…最近の大河ドラマが戦国と幕末を交互にやるのはその時代じゃないと視聴率が取れないからでしょうか。そろそろ明治や大正、そして昭和初期にも手を出してみてはいかがでしょう、NHKさん!【でんすけ】