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映画 アントキノイノチ 感想

映画「アントキノイノチ」は2011年11月19日公開の映画です。監督は、瀬々敬久。
出演は、岡田将生、榮倉奈々、松坂桃李、鶴見辰吾、檀れい、染谷将太、柄本明、堀部圭亮などす。さだまさしの感動ベストセラーを映画化した作品ですが、一体どのような作品になっているのでしょうか。今回は映画「アントキノイノチ」について率直な感想を書いてみたいと思います

学校でイジメを受けている主人公の杏平は、イジメを見て見ぬふりする周囲の友達や先生への憤りから殺意を抱くようになります。しかし、それは杏平が「生きたい」と思い、自分を救うための心の叫びでもあったのです。そして遺品整理業というとても特殊な仕事を通して、描かれている人の命の重さや、様々な人と人の繋がりは誰もが感じたことのあることで、改めて考えさせられるのではないでしょうか。遺品整理業とは、色々な理由によって、なかなか死と向き合えない遺族の代わりに遺品を整理する仕事のこと。死というものと隣合わせになる事で描かれる命は、「おくりびと」に近いものを感じます。切なさを感じさせる岡田将生の演技も注目しながら見てみてください。まずは簡単なあらすじからたどってみましょう。

■あらすじ
高校時代に親友を“殺した”ことがきっかけで、心を閉ざしてしまった永島杏平は、父、信介の紹介で遺品整理業“クーパーズ”で働くことになる。社長の古田は「荷物を片付けるだけではなく、遺族が心に区切りをつけるのを手伝う仕事だ」と杏平を迎える。先輩社員の佐相、久保田ゆきとともに現場に向かった杏平。死後1ヶ月経って遺体が発見されたその部屋では、ベッドは体液で汚れ、虫がチリのように部屋中に散乱していた。最初は誰もが怖気づくという現場に杏平は黙って向き合うが、ゆきに遺品整理のやり方を教わっている最中、彼女の手首にリストカットの跡を見つける……。

3年前。生まれつき軽い吃音のある杏平は、高校時代、同じ山岳部の松井たちに陰でからかわれていた。そんな中、松井による陰湿ないじめと周囲の無関心に耐えられなくなった山木が飛び降り自殺をする。その後、松井の悪意は表立って杏平へと向かい、何も抵抗できない杏平だったが、登山合宿で松井と二人きりになった時にふと殺意が生まれる。崖から足を踏み外した松井を突き落とそうとする杏平。結局、杏平は松井を助けるが、松井は「滑落した杏平を助けたのは自分だ」と周囲にうそぶく。だが文化祭当日、山岳部の展示室には松井を助ける杏平の写真が大きく飾られていた。顧問の教師が撮影していたのだ。それは、教師や同級生たちが松井の悪意や嘘を知っていながら、それを見過ごしていたという証拠だった。杏平は再び松井に殺意を抱き「なんで黙ってるんだよ」と叫びながら松井に刃を向けた……。

ある日、ゆきは仕事中に依頼主の男性に手を触られ、悲鳴をあげ激しく震えた。心配した杏平は、仕事帰りにゆきを追いかけ、彼女はためらいながらも少しずつ自分の過去に起きた出来事を杏平に告げる。そのことでゆきは自分を責め続けていた。なぜ自分は生きているのか。自分の命は何なのか。何かを伝えようとするが言葉が見つからない杏平。そして、ゆきは杏平の前から姿を消した……。

■率直な感想
なんだか壮絶な内容だということはあらすじだけ見てもわかってもらえるかと。では、実際見てみるとどうなのか。まず、感動出来ると言う前提で作品を見るとちょっと期待外れになる可能性があります。

遺品処理業者と言う題材自体は「おくりびと」にも通ずる稀有な題材で、名作の可能性をひめていました。肝心のストーリーもその題材を効果的に描くために練られていたように思います。しかし、それを料理するにあたってちょっとバランスが良くなかった印象。前半と後半のテンポ感がバラバラで、「流れるように見たい」時に止まり、「ゆっくりみたい」時に急いでしまうような感じ。せっかく骨組みを丁寧に仕上げたのだから、組み立ても丁寧にしてほしかったです。終始陰鬱なムードで展開しますが、それに伴う心理描写もすこし強引だったかも。誰かひとりでも感情移入出来るように丁寧に仕上げてくれたらすんなり見れたのかもしれません。

ちょっときびしめに書きましたが、良い点もいくつか。音楽と映像が結構きれいで、それらと胸をえぐるエピソードによって、涙を誘われる場所もちらほら。一度感情移入してしまえば、ころっとあっちの世界(映画の中の世界ですよ)に行ってしまいそう。生きるとか死ぬとか、そう言う事をつい考えてしまいます。「せっかくだから良い思い出になることを沢山してから死にたい」見た人の大半はそんなことを思ったりするのではないでしょうか。

なんにせよこの作品は「あと一歩の爪」が甘かったのが原因で損している気がします。自分が見てもやはりちょっと惜しい感じがしました。監督に次回作に期待です。【でんすけ】