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映画 僕たちは世界を変えることができない。 感想

映画「僕たちは世界を変えることができない。 But, we wanna build a school in Cambodia.」は2011年9月26日公開の映画です。監督は深作健太。出演は、向井理、松坂桃李、窪田正孝、村川絵梨などです。
葉田甲太の体験記を映画化した作品で、カンボジアに小学校を建てるために奔走する大学生たちを描いた物語ですが果たしてその評価やいかに⁉ 今回は「僕たちは世界を変えることができない」について率直な感想を書いてみたいと思います。

今作は葉田甲太が自らの経験を綴った同名原作を、映画化したものです。
ふとした事から始めてしまったプロジェクトを進める中で、自分の無力さを実感し、恋や友情に悩む若者の姿が等身大に表現されています。映画の中でカンボジアを訪れ、ポル・ポト政権時代の収容所跡を訪問するシーンがあるのですが、このシーンでは特に、彼らのリアルな感情がそのまま映し出されていて、見ているうちにこちらにも自然と感情が流れ込んでくるかのような表情さえ感じられます。映画の中にはカンボジアの辛く厳しい現状が描かれているので、その中で見せる子供たちの笑顔に心が動かされてしまいそう。カンボジアの現実、子供たちの感情の動きなども併せて注目してみてください。では、始めに簡単なあらすじを書いてみたいと思います。

■あらすじ
医大に通う2年生、コータこと田中甲太は何不自由のない生活を送っている。そんな毎日に不満はないけど、なんだか物足りないと感じていたそんなある日、コータは郵便局に置かれた海外支援案内のパンフレットを手にする。そこには「あなたの150万の寄付でカンボジアに屋根のある小学校が建ちます」と書かれていた。頭の中で何かが弾けたコータは「カンボジアに小学校を建てよう」と思いつく。そしてその計画を知り合い全員にメールを送信する。

ところがコータのもとに集まったのはたったの3人。いつもの仲間の芝山と矢野、そして合コンで知り合った本田だった。それでもコータは学生サークル“そらまめプロジェクト”を立ち上げ、チャリティーイベントを開催。早速、人を集めるために慣れないナンパをしてみたり、地味にビラを配ったりした。本田のおかげで一回目のイベントはなんとか成功するが、カンボジアという国のことさえ知らないコータたちはスタディツアーと称してカンボジアへと飛ぶ。ところが彼らが到着したのは東南アジアの最も貧しい国だった。地雷の眠る村で生活する人たち、HIV感染者の現実、そして学校に行けない子どもたち……。

日本ではまるで想像もできないような世界や現実を目の当たりにし、うなだれるコータたち。さらに日本に戻ると、思わぬ災難が待っていた。イベントに協力してくれていたIT企業の社長が違法取引の容疑で逮捕され、サークルの評判はみるみる落ちていった。せっかく集まった仲間たちもボランティアに疑問を持ち始め、遂には仲間割れ。しかも大学の単位もギリギリアウト。「本当は何がやりたかったのだろう」と絶望の中、カンボジアの子どもたちの無邪気な笑顔を思い出す。果たして、子どもたちの笑顔はコータをどこへ導くのか。そしてコータは子どもたちのために小学校を建てることができるのか……。

■率直な感想
あらすじからしてちょっと予想の出来ない映画ですが、実際に見てみると意外にしっかりした作りで、気がつけば見入ってしまいました。この手の映画はリアリティを出せないととたんに偽善感漂う不快な映画になってしまいそうですが、この作品は違った。導入部分は普通のムードなのですが、途中からどんどん引き込まれて行ってしまいます。

ポルポト政権時のカンボジアは狂気の世界であったので、そのテーマに今踏み込むのは何か意味深なものを感じますがそんなの抜きにして楽しめます。予備知識があればなおさら良いですが、無くても大丈夫です。逆にカンボジアの近代史に興味を持つきっかけになると言う意味では良いでしょう。

俳優達も自然な演技をしていました。演技というより、自分達も出演しながらカンボジアの世界に興味をしめしていたのでしょう。向井理は2010年代最もブレイクした役者の一人ですが、彼の薄めでさわやかな顔がこの映画に合っていました。やや棒読み気味のセリフ回しももはや彼の特徴と言って良いでしょう。熱すぎる演技よりも説得力を持たせるのに良かったのでは。


なんだかほめてばっかりいましたが、気になる点が無いわけではありません。カンボジアのシーンの完成度に比べて、日本のシーンがややチープだったこと。これは、現実感の無い日本と、現実に直面しているカンボジアを比べると言う意味があるのかもしれませんが、意図的だとしても、もう少し日本のシーンを頑張って欲しかった。

今回は長々と感想を書きましたが、全体としてはとても良い映画です。若い人には特におすすめかな。俳優陣と同世代の人はジャストで感じるものがあるでしょう。【でんすけ】