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映画 手塚治虫ブッダ 感想

映画「手塚治虫のブッダ 赤い砂漠よ!美しく」は2011年5月28日公開の映画です。監督は森下孝三。出演は吉永小百合、堺雅人 、吉岡秀隆などです。

今でも世界中で愛され続ける手塚治虫先生の作品ですが、その中でも最高傑作と称えられる「ブッダ」が、初めて長編アニメーションという形で映画化されました。原作ファンや、手塚作品のファンには賛否両論ありそうですが、どう評価されているのでしょうか?今回は「手塚治虫のブッダ 赤い砂漠よ!美しく」について率直な感想を書いてみたいと思います。

「手塚治虫のブッダ 赤い砂漠よ!美しく」は手塚治虫の人気作品、“ブッダ”を映画化したものです。監督は「聖闘士星矢」などを手がけた森下孝三。

仏教の開祖・シッダールタの生涯を描いた原作は、連載になんと10年を費やし、手塚氏が人生をかけて作り上げた作品と言ってもいいほどの大作です。今回の映画化では3部作という形式になっていて、第1部となる本作では、のちにブッダになるシッダールタの誕生と、厳しい階級社会に疑問を抱く若き日々の姿が、描かれています。

説話に基づき、なぞったものではなくオリジナルな流れを組み立てているので、エンターテインメントとして楽しめることを目指したそう。声の出演も、シッダールタの声を吉岡秀隆、チャプラに堺雅人、チャプラの母を吉永小百合が演じるなど、俳優中心の豪華キャストにも注目したいところです。さっそく率直な感想に行ってみましょう。→あらすじはこちら

■率直な感想
まず思ったのは、この作品を表現するには2時間じゃ足りないと言うこと。ストーリにいろんな要素をつめこみすぎた結果、「何を見たのかわからなくなりがち」なのが残念でした。伝えたい事はわかるのですが、心理描写を省いて出されるセリフはちょっと説明くさく感じてしまうかな。アニメーションは奇麗ではありますが、動きを含め洗練はされていません。OVAでも良かったのではと感じてしまいます。
原作のブッダは、彼を一人の悩める人間として、ハードの描くことで「史実をもおびやかすリアリティ」を得ることに成功していました。そして、ブッダに興味が無くても壮大なドラマとして楽しむことが出来る作品でした。しかし、今作はその深さ、壮大さを再現出来てはいない印象。何と言うか映像とストーリーとがちぐはぐで、この手の映画で一番大事な「説得力」が失われているのです。説得力を作品に持たせるのは本当に難しいもの。ストーリー、演技、作画、そして演出で総合的に絶妙なバランスで描き、初めて得られるもの。その「バランス」が悪ければ散漫になってしまうのでしょうね。

良い点もあります。原作のブッダやチャプラよりも美男子に描かれてるのは賛否の分かれるところですが、原作を知らずに映画を見た人が「原作を読んでみたい」と思わせる要素の一つだと自分は思いました。何も知らなかった女子がこの映画を通じて、原作を手に取り、その深さを知ることは好ましいことでは無いでしょうか。ストーリーもおおむね忠実ですので、とっかかりには良いです。ブッダが多くの「仏教」の宗派で語られる様な神様では無く、「どうしたら苦しまずに生きられるか」に向き合った悩める人間だったことを知るきっかけになるだけでも価値のあるのかもしれません。

今作はブッダが悟りを開くまでと開いた後の展開はまだ描かれていないので、この作品では手塚治虫のブッダの前半5%くらいしか描いていません。全体を描いた映画ではありませんのでご注意を。【でんすけ】