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映画 小川の辺~おがわのほとり~ 感想

映画「小川の辺 おがわのほとり」は2011年7月2日公開の映画です。 監督 は篠原哲雄。出演は、東山紀之 、菊地凛子、勝地涼、片岡愛之助、尾野真千子松原智恵子、西岡徳馬 などです。藤沢周平の短編「闇の穴」を映画化したこの作品。義と情の狭間で揺れ動きながら人としての道を突き進もうとする人々の想いが動く物語ということですが、果たしてその評価やいかに!? 今回は映画「小川の辺 おがわのほとり」について率直な感想を書いてみたいと思います。

本作は時代劇作家、藤沢周平の小説を「山桜」などを手がけた篠原哲雄監督が映画化したものです。「たそがれ清兵衛」など、封建社会の現実に翻弄されながらも懸命に生きようとする人々の姿が描かれています。

家を守り、武士としての義を貫くために、妹の夫を討たなければならないという主命を果たそうとする、主人公の戌井朔之助を『山桜』に続き、藤沢作品二作目となる東山紀之が演じます。硬質な演技は藤沢周平の世界を体現しようとしていますがはたして!?

一方、武士の妻として、夫を守るため兄に刃を向ける田鶴は菊地凛子が演じます。彼女は時代劇初挑戦となるようです。その他、豪華俳優人が多数出演しているので見ごたえのある作品に思えますが、一体どんな評価になっているのでしょうか。まずは簡単なあらすじから辿ってみたいと思います。

■あらすじ
海坂藩士の戌井朔之助は直心流の使い手として、その腕を買われて、家老の助川権之丞から、ある藩命を受ける。しかしその藩命とは、なんと親友である佐久間森衛を討つことだったのだ。藩主への上書によって藩の農政を痛烈に批判した佐久間は、謹慎処分を受けた後、妻の田鶴を連れて脱藩していたのだ。

朔之助が受けた藩命は、佐久間に対する裁きだった。民のことを想って正論を訴えた友を斬らねばならないのか…と朔之助の心は揺れる。しかも佐久間の妻である田鶴は朔之助の妹だ。幼少の頃から気が強く負けず嫌いで、彼女自身も直心流の使い手である。田鶴はきっと武士の妻として向かってくるに違いなかった。

戌井家の家長である朔之助に対し、妹を斬ってでも主命に従えと言う父の忠左衛門と、ただ涙を流す母の以瀬。妻の幾久は朔之助の身を案じながらも、気丈に振る舞う。翌朝、朔之助は幼い頃から兄弟のように育ち、田鶴への想いを秘めた奉公人の新蔵とともに江戸へ向けて旅立った。やがて二人は佐久間の隠れ家を見つける。そこは兄妹と新蔵が幼い頃に遊んだような下総の小川の辺にあった。遂に向き合うことになってしまった朔之助と佐久間。幼い頃より築き上げてきた絆が、無情にも引き裂かれてしまうのか。そして彼らが選んだ道とは……。

■率直な感想
まずリアリティのある映像やセットに高評価。過去を再現するのは時代劇全般を通して大きな課題ともいえますが、今作ではクリアしていると言えるでしょう。自然の美しさも特筆もので、タイトルにもある「小川」の景色はとても綺麗でした。映画の最初から最後まで彩るそれらの風景はまるで癒し系DVDを見ている様。

東山紀之は凛々しく静かな演技が似合っていて、安心して見られました。おそらく顔の濃い俳優さんよりもこういった時代劇にはしっくり来るのでしょうね。

静かなる色気で淡々と表現していた東山に大して、菊池凛子はせりふやたたずまいが世界観にマッチせず、多々浮いていた印象。今作の時代感、風景、ストーリーからしたら軽さが目立ってしまいました。印象的な東山との対比でそれが浮き彫りになってしまったのが残念です。

ストーリーは淡々とすすみます。大きな盛り上がりが無いので、多少中だるみしてしまう感もあり。原作では想像で補う部分も、映像化してしまうと、「見えているものがすべて」になってしまう。その観点からすると今作はちょっと心情変化が甘いかなと。 行動の動機はわかるのですが、それがいまいち説得力を持たないのは脚本の丁寧さが足りなかったからでは無いでしょうか。そこが残念でした。ダイナミクスもやや足りず、ともすれば退屈な作品になってしまいがちなので…。

とは言え、全編を通して静かで綺麗な作品です。ゆったと癒し系DVDを見るつもりで自然を見るのも良いのでは無いでしょか(それありか!?)。個人的にはこういったジャンルの日本映画には頑張ってほしいと思っています。 【でんすけ】 【でんすけ】