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映画 さや侍 感想

映画「さや侍」は2011年6月11日公開の映画です。 監督は松本人志、出演は、野見隆明、熊田聖亜、りょう、ROLLY、腹筋善之助、國村隼、板尾創路などです。 松本人志の独特な表現による奇想天外な設定のこの作品。さや侍の勘十郎と娘のたえの奮闘を描いた物語ですが果たしてどんな作品になっているのでしょうか。 今回は映画「さや侍」について率直な感想を書いてみたいと思います。

本作は刀を持たない侍、さや侍の勘十郎と、その娘“たえ” を中心に、松本人志の創りだす笑いと哀しみを繊細に表現し、親子の絆や、葛藤などをオリジナリティあふれるストーリーで描かれた作品とのこと。さや侍を演じる野見隆明は、おじさんたちをいじりたおすバラエティー番組に出演したことがきっかけで松本人志監督に見いだされた、全くの素人のおじさん。山の中で着物を着せられ、何も聞かされないまま撮影が始まってしまったというエピソードもあるようです。ストーリーはもちろんのことですが、そんなエピソードを聞くとますます作品が気になってきますね。では、始めに簡単なあらすじから書いてみたいと思います。

■あらすじ
野見勘十郎は、とあることがきっかけで、自ら侍として戦うことをやめ、刀を捨てた。娘のたえは、そんな父を軽蔑し反発する。二人は行くあてもない流浪の旅を続けていた。勘十郎 は無断で脱藩した罪に問われ、懸賞金が掛けられていた。そして次第に追い詰められゆく勘十郎。

遂に捕らわれてしまうのだが、捕まった藩の殿様はかなり風変わりな殿様として世に名を馳せていた。殿様の前に連れていかれる勘十郎。そこで彼は、母親を亡くして笑顔が無くなってしまった若君を30日で笑わせなければならないという“30日の業”に処される。しかし、これに成功すると無罪放免になるというのだ。 勘十郎は娘のたえと共になんとか若君を笑わせようとするのだが……。

■率直な感想
シュールな笑いで見せてくれる映画かと思いきや、意外や意外、考えさせされる内容でした。過去2作品とは全く違い、ラストの感動に向けて綿密に作り上げられている印象。退屈な部分が無かったとは言いませんが、おおむね期待を上回る出来でした。大人が見て感動出来る部分があるのは、監督は「大人の苦さや心の闇」を知っているからでしょう。そう言った意味では松本人志だから作れた作品と言えなくはありません。

主役の能見隆明はこれまた新鮮な演技。いや、演技と言うか素のままとでも言いましょうか。私たちの中には彼のような存在が社会で弾かれてしまう、その滑稽な部分をどこかさげすんで笑ってしまうところが正直あるでしょう。その「微妙なアンタッチャブルな心境」を最後には感動に変えてしまう。ずるいとも言える演出ですが、他に誰も考えなかったことですからやったもん勝ちですね。能見氏からは「役作りをした役者さん」では絶対に出ないテイストが出ていました。それだけで見る価値のある、そんな映画です。

一方で今までの松本テイストが好きな方には期待外れかもしれません。ここ20年、猛威をふるった彼のテイストもこの時代にあって、変わらざるを得ない、そんな匂いもあり複雑な心境にもなりました。しかし、その変化は日本の芸能界においてプラスに働く…。とは広げすぎですかね(爆)【でんすけ】