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銀の匙 Silver Spoon 感想

2011年4月6日より週刊少年サンデーで連載開始された「銀の匙 Silver Spoon」は、作者があの大人気漫画「鋼の錬金術師」の荒川弘であるということから、連載当初からかなり話題となっていました。 今回はそんな「銀の匙 Silver Spoon」についての個人的感想をお送りいたします。

荒川弘といえば「鋼の錬金術師」。それくらい「鋼の錬金術師」のイメージが強い上で読んでみた「銀の匙 Silver Spoon」ですが、正直な第一印象はなんだか地味…。「鋼の錬金術師」は架空の世界でのファンタジーな話とそれに伴った、派手なキャラクターで印象がとても強かったのですが、「銀の匙」は打って変わって舞台は北海道の農業高校でテーマも農業に沿ったもの、主人公もこれといった派手さも無い、決まった夢もない普通の少年なので、差がある分そう感じるのはしょうがないのかもしれません。

ですがそんな印象は始めだけ。読み進めていくうちに出てくるハガレンでなんだか見たことあるようなキャラクターや、見た目に派手さが無い分中身が濃いキャラクター達が楽しませてくれます。主人公の八軒も、少年漫画にしてはめずらしく夢の無いキャラクターで、周りの生徒との差に多少なりとも劣等感を抱いているように見えるのですが、その姿はまさに今時の若い世代に多い姿なので、良い意味で思わず自分と重ね合わせてしまったりしてしまうと思います。

感情移入してしまうキャラクターというのは、人気漫画には必要な条件だと私は考えているので。作者本人も漫画家になる前は北海道で農業従事者として働いていた経験もあってか、テレビの農業ドキュメント顔負けの内容を知ることができるので時には気分が落ち込んでしまうような残酷な描写もあります。都会育ちの人も、田舎育ちの人も分かってはいる食べ物になっていく生き物の命の現実を、あらためて突きつけてきます。この漫画で特にすごいと感じたのはこの部分で、分かっているのに、元々知っているのに初めて知るような衝撃と重さを感じる時があるんです。この感覚にどんどん引き込まれていく読者は多いと思います。

物語は序盤から特徴がありました。シュールさも織り交ぜた安定した面白さとメッセージ性があるのはさすがというところでしょうか。漫画とはいえ、日常を舞台にしたものなので時々自分の生活と被るところがあったりして、そういう所でクスっとしてしまったりもします。「銀の匙」はストーリーの進行が楽しみ、というよりも自分には無いものばかりを持ったクラスメイトに囲まれた八軒が、農業を通じて成長していく姿を長期にわたって見守っていきたくなる、そんな漫画です。わかりずらかったですか(爆)【ことひめ】