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映画 レッドタートル ある島の物語 感想
映画「レッドタートル ある島の物語」は2016年9月27日公開の映画です。
オランダ出身のアニメーション作家、マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィットが監督を務めた長編アニメーション。マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット監督は過去に『岸辺のふたり』で第73回アカデミー賞短編アニメ賞を受賞しています。
特筆すべきはスタジオジブリで初の海外クリエイターとの共同製作作品であること。スタジオジブリは説明するまでもなく、宮崎駿監督を中心に、千と千尋の神隠しやもののけ姫、ハウルの動く城など、数多くの名作で大ヒットを記録し、日本国民では誰でも知っていると言っても過言では無い、アニメ制作の代表的スタジオ。
そのジブリがまさかの海外CG作品に参入!?そう驚いた人も多かったのでは無いでしょうか。
今回はそんな話題の映画「レッドタートル ある島の物語」について率直な感想を書いてみたいと思います。
まずは簡単なあらすじから見てみましょう。
あらすじ
とある海。大嵐の中、海に投げ出されてしまった男。男は一命をとりとめたものの、いつのまにか見ず知らずの無人島にたどり着く。いったいここはどこなのか!? 謎の島の正体もわからないもま、男は何度も何度も力を尽くし、島から脱出しようとするが、不思議と島に戻ってしまう。何が起こってしまったのか…。途方にくれていた彼の目の前にある女性が現れた。男はどうなってしまうのか。彼女は何者なのか…!?
率直な感想
評価の分かれるストーリー
まず「スタジオジブリ」が関わっているだけで、どうしてもハードルが上がってしまいます。どうしても前述したような今までの名作ジブリの世界観を期待してしまいますが、作品のテイストはまったく別物。子供向けと言うよりは大人向けの、落ち着いた作品です。作品の進みはやや淡々としていて、ドラマティックさに欠ける印象。少なくとも単純な冒険活劇を期待してみると肩透かしをくらうでしょう。ファンタジー色は要所要所にありますので、退屈とまでは言いません。
ストーリーは地味ではありますが、風景や海、空、砂や植物などの描写はとても丁寧で美しいので「そんなきれいな空間に静かにトリップしたい」というような人にはオススメです。特に表題ともなっている亀の繊細な描写はこの映画の見所のひとつ。人物のセリフがほぼ無く、そこが非日常なトリップ感を加速させています。
しかしこうしてレビューを書いて見て思うのがやっぱり「いかんせん地味!」と言うこと。亀が美しい!と言われてもなあ…(笑)
台詞なしの伏線。声優も無し。
ジブリ迷走ではなく、鈴木プロデューサーの冒険
何かこの世界観、見たことがあるなと思ったら、鈴木敏夫プロデューサーのインタビュー記事を見て、妙に納得してしまいました。以下一部抜粋。
“鈴木敏夫プロデューサー
「彼の作った短編がとにかく大好きで、そのマイケルが長編を作ったらどうなるんだろうとう好奇心だけで今回は作りました。だから、これをきっかけにそういうことをどんどんやっていくかといったら、出会いがあるかどうかだと思っています」”
なるほど。この世界観、短編映画際でよく見る世界観だ。日本でも数多く短編映画際が開催されていますが、そこにはよく海外のクリエイターも作品を出品していて、無音の短編アニメーションもよく見かけます。「カールじいさんの空飛ぶ家」と言う3DCGの映画の冒頭部分に、おじいさんとおばあさんとの出会いと別れがセリフが無く描かれていますが、そこが本編以上に泣けると公開当時、評判でした。見た人も多いかと思いますが、あんな感じの作品が短編映画際によく出品されていました。
今回の「レッドタートル ある島の物語」はそれとは雰囲気は違いますが「短編映画の独特のマイナー空気」をとても感じます。それが決して悪いというわけではないのですが、やはり興行収入何億円!と言うイメージのジブリのメジャーっぽさを期待すると、かなり違うでしょう。台詞無しというところもかなりの冒険。この世界観、先ほどの鈴木プロデューサーのインタビューから察するに、間違いなく「わざと」です。
思えばジブリは近作に限らず、定期的に冒険しています。それは監督の冒険と言うより、鈴木敏夫プロデューサーの冒険。ゲド戦記では宮崎駿監督の息子、宮崎吾朗氏に監督を打診したり、かぐや姫の物語にとんでもない制作費をかけたり、かなりの冒険家です。今回も意外と言うより、鈴木氏のいつもの冒険であり、そう言った意味では今までのジブリとは明らかに色の違う作品であることも妙に納得してしまいます。
さて、横道にそれてしまいましたが、この「レッドタートル」。映画館でカタルシスを味わうところに価値があるのではなく、DVDやブルーレイを購入し、家のテレビでふとしたときに「流す」、癒し映像的な価値を感じました。民法のやかましいバラエティ番組と対極の映像で、部屋の空気を変えてみる…
それは鈴木プロデューサーが想定している楽しみ方かどうかはわかりませんが。個人的には嫌いな作品では無かったです。【井出】